真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
じゃあ、私自身はジークを愛してるーー?

週末の朝の電車に乗り込み、女性専用車両の椅子に座ると、立ち乗りの乗客に対面の窓の外の景色を塞がれて、狭くて逃げ場のない車内が、より一層圧迫感を増した。

目線の置き場所に躊躇した私は、バッグを膝の上に乗せて抱え込み俯いた。

自分の膝の辺りに視線をぼんやりと漂わせながら、静かに電車に揺られて重い思考を巡らせる。

私はジークを愛して......いない。

確かに、過去には、私の憧れの男(ひと)だった。

だけど、それは愛情ではない。

私が自分の中に愛情を感じたのはーー。

「毎度ご乗車いただきまして、ありがとうございます。次は東の上、東の上です」

まるで頭から水を被せるように車内アナウンスが聞こえて、今更後戻りは出来ないのだと私を現状に引き戻した。

次の駅で降りなきゃ......。

乗り過ごさないようにと気を引き締めると、一度脳裏によぎった、これから目を瞑らなければならない気持ちに固く蓋をした。

そして、産婦人科のある次の街で降りるため、バッグを開けてモバイル定期が搭載されているスマホを取り出した。

LINEの受信を知らせる緑色のランプが光っているスマホを見下ろしながら、メッセージの送り主がジークであると予測しつつ、私は、ため息にも似た小さな息を吐き出しながら、画面を指先で軽くスクロールした。

ジークには今日朝一番に産婦人科へ行くことを伝えていたので、様子を伺うためにLINEを送って来たのだろう。

「おはよう。これから仕事に行ってきます。優花も出かける時は気をつけて行ってね」

他愛ない短い文章に、胸が錯乱したように騒ぐ。

LINEを送ってきたのはジークではなく、広務さんだった......。

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