真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ～
広務さんに何と返信しよう......？

口元に手を当てて必死に言葉を考える。

此の期に及んでも、思いつくのは言い訳と嘘ばかり。広務さんに、どうしても本当のことが言えない。

広務さんを傷つけたくない。嫌われたくない。不埒な女だと思われたくない。

胸に次々と湧き起こるのは自己中心的な強迫観念。

自分で自分の首を絞めている為体を味わいながら、スマホを握りしめて項垂れていると、またしても車内アナウンスによってマイナスの内観にストップがかかった。

「お待たせいたしました。東の上です」

電車は”シューッ”という空気を排出する音を聞かせながら左側のドアを開けた。

ドアから比較的離れた場所に座っていた私は降りそびれないようにと、気持ち急ぎ足で電車とプラットフォームの境目を渡った。

降り立った東の上駅から今日行く産婦人科までは歩いて１０分ほど。タクシーを使う距離でもないし、バスを待っている時間も惜しい。

私は徒歩で病院へ向かうことに決めて、南口出口の案内に従ってプラットフォームの階段を上り、駅の外に出た。

久しぶりに来た東の上の街。都会の中心部に、ほど近い場所に位置していながらも、流行りの店やチェーン店よりも個人商店や老舗が多く、古き良き日本の町並みを今に伝える和やかな風景を醸し出している。

信号がなく、幅の広い凸凹のアスファルトの道路に向かい合わせに店を開けている雑貨店や精肉店、老舗のカフェ......。

ノスタルジックな景色を堪能しながらローヒールで闊歩することおよそ１０分、理容室と文房具店に挟まれて「阿月産婦人科」の看板が見えた。

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