真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
”取り急ぎ”

......なんてことーー!

自分の中の知らない誰かが叫んだ。

灰色の分厚い曇り空から落下する、突き刺さるような冷たさの氷混じりの雨粒が次第に心の中に溜まっていく。

あとどれくらいーー??

私は胸を窒息させそうなくらい心臓を激しく動悸させながら、広務さんからの対面の誘いに動揺していた。

拒否することなんて出来ない。だって彼は、私の正式な婚約者。

「休日出勤、お疲れ様。今、東の上に居るの。そっちに戻れるのは4時頃になりそう。ここ田舎だから、電車の本数限られてて......」

「東の上?? 珍しいとこに居るね(笑)買い物? そっか、じゃあ俺、車で迎えに行くよ。雨降ってるし」

広務さんは軽快な文章の中に、明らかに私の動向を探る束縛をにおわせながら、秒の速さでLINEを返す。

「迎えに来てくれるの? ありがとうっ! じゃあ待ってるっ!」

ーーなぜだろう?

どうしてこんなに実際の心境とは相反するリズムで反応できるんだろう......。

妊娠していると感じた時から、私の体内には私とは違う、もう一人の自分が生まれた。

その理由は守るためだ。

自分とは違う、自分の分身を守るため......。

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