真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
悪い。申し訳ない。......胸が苦しいーー。

私を迎えに。この悪天候の田舎街へ愛車を飛ばして出向いてくれた彼は、端正な顔立ちを波立たせて眉間に皺を寄せ、口元を堅く結び、それから背中を窄ませながら傘もささずに、刺すような外気に晒されていた私のしなだれた体を抱き寄せてくれた。

「ごめんね......。私のせいで......」

「うん? 何が?」

「私のせいで広務さん、風邪ひいちゃう......」

「俺は大丈夫だよーー。 それより優花の方が心配だよ。いつからあの場所に、いたの? LINEの返事と違って、元気ないし......。具合悪い??」

広務さんは自分も髪が濡れて冷え切っているというのに、それよりも助手席に深く沈んで虚ろな様子の私を、これでもかというほどに心配してくれる。

精錬な婚約者の純愛は痛々しい程に澄み切っていて、フロントガラスに砕け散る、くすんだ雨のように、私の視界を滲ませた。

胸を絞られれば絞られるほどに瞼に涙が溜まっていった私は、その事をこの涙はどうして生まれてきているのだろうと、まるで他人事のように考えていた。

こんな事、以前の私ではあり得ない事だった。広務さんが辛い時は私も辛い。広務さんが悲しい時は私も同様に。広務さんが嬉しい時は自分の事以上に喜んだ。彼からの愛情を感じた時は、切ないくらいに彼が愛おしかった......。

でも今は、それにも勝る感情が私の中に芽生えつつあるーー。

それが悲しくて、涙が溢れてきているのかもしれない。

自分の中にある掬いきれない感情の靄を手玉にとり、どうにか涙がこぼれ落ちないように、ぐっと肩に力を入れると、広務さんは、いとも柔らかく私の固い肩に触れた。

「とりあえず、俺の家行こう?」

安定した優しい声だった。

「うん......」

私は彼と出会った頃の自分を取り戻していた。

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