真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
すでにエントランスから薫っているような彼の部屋のルームフレグランスの香り。
もちろん、これは全部私の妄想で、実際にはあり得ない。ただ、それくらい胸が満たされている、幸福を感じているという事。
前回訪れた時は、胸が弾むという幸福。今日訪れて感じている幸福は、弾むというような軽やかなものではなく、消え入るような儚さを美しいと愛おしんでいる。
「座って。コーヒーでいい?......あ、お茶の方がいいかな。」
「コーヒーで大丈夫。私、入れるね」
「たまには俺に淹れさせてよ。そんなに気を使わないで、俺達夫婦になるんだから......。優花、ちょっと体調悪そうだし、座ってて」
「......うん。ありがとう」
虫の息の声で彼に返事をした。別に身体の具合が悪くて、こういうふうに振る舞ったわけじゃない。
”夫婦になるんだから”
現状、広務さんにとって、しごく当たり前の言葉。そして、その言葉は酷く痛烈に私の頭を撃ち抜いていた。
やはり、自分は彼のもとに居るべきではない......。
「飲んで温まるから」
ようやく悟った結末を喉に詰まらせたまま、私は彼に促されるままに熱いコーヒーを喉元へ流し込んだ。
私が淹れるよりも少し苦めのコーヒーは、喉元を過ぎ去っても余韻を止めたままで、より一層私の胸を重苦しくさせた。
これから先、広務さんに何と言えばいいんだろう......。
コーヒカップを両手で持って俯いている私を見つめながら、広務さんは少しづつ身体を近づけてくると、やがて私の肩を抱いた。
「少し、落ち着いた?」
間を空けて、私は小さく頷いた。
私の様子を見届けた広務さんは、それまで抱いていた私の肩から自分の腕を離し、両手で自分の膝を掴むと、やや姿勢を正した。それから、改まった口調で静かに話し始めた。
「今日、会社から急遽辞令が下りて。前々から着手していたニューヨークでのプロジェクト......来月から正式に俺をリーダーに任命して、その暁に俺は本社の専務へ昇進する事になった。だから、優花、仕事を辞めて俺について来て欲しい」
もちろん、これは全部私の妄想で、実際にはあり得ない。ただ、それくらい胸が満たされている、幸福を感じているという事。
前回訪れた時は、胸が弾むという幸福。今日訪れて感じている幸福は、弾むというような軽やかなものではなく、消え入るような儚さを美しいと愛おしんでいる。
「座って。コーヒーでいい?......あ、お茶の方がいいかな。」
「コーヒーで大丈夫。私、入れるね」
「たまには俺に淹れさせてよ。そんなに気を使わないで、俺達夫婦になるんだから......。優花、ちょっと体調悪そうだし、座ってて」
「......うん。ありがとう」
虫の息の声で彼に返事をした。別に身体の具合が悪くて、こういうふうに振る舞ったわけじゃない。
”夫婦になるんだから”
現状、広務さんにとって、しごく当たり前の言葉。そして、その言葉は酷く痛烈に私の頭を撃ち抜いていた。
やはり、自分は彼のもとに居るべきではない......。
「飲んで温まるから」
ようやく悟った結末を喉に詰まらせたまま、私は彼に促されるままに熱いコーヒーを喉元へ流し込んだ。
私が淹れるよりも少し苦めのコーヒーは、喉元を過ぎ去っても余韻を止めたままで、より一層私の胸を重苦しくさせた。
これから先、広務さんに何と言えばいいんだろう......。
コーヒカップを両手で持って俯いている私を見つめながら、広務さんは少しづつ身体を近づけてくると、やがて私の肩を抱いた。
「少し、落ち着いた?」
間を空けて、私は小さく頷いた。
私の様子を見届けた広務さんは、それまで抱いていた私の肩から自分の腕を離し、両手で自分の膝を掴むと、やや姿勢を正した。それから、改まった口調で静かに話し始めた。
「今日、会社から急遽辞令が下りて。前々から着手していたニューヨークでのプロジェクト......来月から正式に俺をリーダーに任命して、その暁に俺は本社の専務へ昇進する事になった。だから、優花、仕事を辞めて俺について来て欲しい」