真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ～

「日野さーん、これコピー。１０部ね」

「わかりました」

「あ、それから、ついでにコーヒー入れてくれる？」

「はい」

この会社に就職して数年、こういうやり取りを半ばルーティーンのようにこなす月曜日の朝。

とても、怒涛の週末をくぐり抜けた身とは思えない程、波のない日常が帰ってきた。

しかし、瞼の裏側を見つめてみれば、今朝一番の便で広務さんはニューヨークに旅立って行き、それからジークにも、私はまだ妊娠していなかった事実を告げてはいない。

日曜日、広務さんが私の部屋を訪れていた時、ジークは一切、私の前から気配を消していた。

まるで、そのことを利用したかのように、私は広務さんを受け入れて、あたかも何事もなかったふりをして元のさやに収まることを選択した。

「なーに、ボーッとしてんのっ！」

「えっ！？あっ、ううん。別にっ」

仕事中であるにもかかわらず、気を抜くと、どうしてもプライベートに目が向いてしまう。

そのことを見透かした同期の実加は、上司に気がつかれる前にと私に葉っぱをかけてきた。

「なに優花ボーッとしちゃってっ、あ！昨日は日曜日〜っ！もしや、彼とお泊まりですかぁ〜っ！？ふんふん、それで優花は寝不足ね」

「やっ、違うってばっ！」

「いいの、いいの、照れなくても〜」

相変わらずポジティブシンキングな実加。いくら仲の良い同期でも、今の私の胸中は察するに余りあるだろう。