真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
どれくらいの時間、喫茶店に居たんだろう?店を出る頃には、すっかり外の景色は暗くなって背の高い街灯の明かりが行き交う多くの人々を空かさず照らしていた。

オフィス街にこんなに大勢の人々が闊歩している時間といえば、おそらく8時か、もしくはそれ以降。

随分と長居したものだ。それに反して、妊娠していなかった事を打ち明けた時のジークの返事は考えられないほど、あっさりと短かった。

「そっか......」

「え?......それだけなの!?」

「ちゃんと病院に行って調べてもらったのなら、それが答えだろう。元々、妊娠の有無にかかわらず、オレの君への気持ちは変わらない」

そう言ってジークは私の手元に目線を移した。その行動は明らかに、私の手のひらの中にある広務さんからのLINEを意識してのことだった。

嫉妬心を露呈している事を男のプライドが許さなかったのか、ジークは気持ちも場面も切り変えようという感じで喫茶店を出る事を私に促した。

「そういえば、優花お腹空いてない?カフェではコーヒーだけだったし。.......というか、気がつけよだよな、オレも。妊娠してたらコーヒー頼むわけないもんな」

喫茶店を出てからのジークは吹っ切れたように朗らかに振舞いながら、夜の道を私に歩幅を合わせて歩いてくれた。

「あんまり、お腹空いてないな、私......」

「......そう?じゃあ、送るよ。って、同じマンションだね」

ジークは私が食事の誘いを断ったことにほんの一瞬だけ表情を曇らせたが、すぐに持ち直して、颯爽と車道に身を乗り出すと片手を挙げて、タイミングよく向かってきたタクシーを停めた。

「エンペラーズタワーマンションまで」

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