真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
「すみません......。少し、遅れます......」

とても憂鬱な気分だった。

どんな男性が現れるのかと期待していた自分が、一転して遅刻というペナルティを背負い肩身の狭い立場に変わった。

何よりも、お相手を待たせしてしまうことへの申し訳なさに胸が痛んだ。

断られても仕方がないな......。

とにかく、今はユメちゃんを駅の交番まで送り届けなきゃ。

「大丈夫だよ。ママはすぐに迎えに来るからね......」

私は時折、腰を屈めてユメちゃんの視線に近づいて彼女をなだめながら、駅の中央改札口付近にある交番へと連れて行った。

「結芽っ!!」

交番に着くと同時に、耳に飛びん混んできた女性の声に私はホッとした。

ユメちゃんのお母さんはユメちゃんをひしと抱きしめて彼女の頭を撫でながら、しきりに「ごめんねっ、ごめんねっ!」と言って謝っていた。

私は無事にお母さんのもとへと戻ったユメちゃんを見届けて、静かに交番を後にした。

駅の交番から3番線までは5分程、急げばこれから来る電車にギリギリ間に合うかもしれない。

私は9センチのハイヒールで走った。

あきらかに、走るには不利な靴だ。

それでもなんとか間に合って、発車のベルが鳴り響く中、扉が閉まりかけている電車に飛び乗った。

ようやく一息ついて、電車の中で乱れた髪を直した。

それなのに、電車を降りて再び疾走。

待ち合わせの11時まであと7分ーー。

なんでもっと駅から近い場所にしてくれなかったのよー!

そりゃまぁ、雰囲気は最高のカフェだけどさっ!

怒っているのか、焦っているのか、分析できない感情を抱えて私はひた走った。

そして、なんとか着いたお見合い現場。到着時間は10時59分......。

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