真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
ルール違反だと分かっていた。

交際終了になった男女が再度会うことは禁止されていると。

だけど、必死だった。情けないと思われても......。

それは電話越しのカウンセラーにも伝わっていたはず。

担当カウンセラーは暫く沈黙して俺からの申し出を考慮しているようだったが、結局、俺の要望を通すことはしなかった。

そして絶望という壁はさらに厚くなり、優花と別れて間もなく、俺は単身ニューヨークへ渡らなければならなかった。

本当は彼女を連れて、この場所に来る予定だった。

だから、契約した部屋の間取りも一人暮らしには広すぎて、実に寒々しい.......。

唯一の救いといえば、大きな窓ガラスから望む太陽だけは、彼女が暮らす日本と同一の代物だということ。

俺は昇り始めた太陽を合図に不毛な追想に蓋をして、いつものように出社の準備をした。

ニューヨーカーの朝は忙しない。皆、我先にと、それぞれの職場へと急ぐ。ルール違反も半ばご愛嬌。

毎朝、朝食を買うホットサンドの店では、俺より後から来た奴が順番無視して注文してる。

俺も負けじと大声を張った。

「One morning crusher!!」

ようやく、ありつけたホットサンドを片手にスクランブル交差点を横切り、地下鉄を乗り継いで会社へと到着した。

勤勉な日本人の性か?俺は毎朝、一番乗りで出社してしまう。

誰もいないオフィスで独り、パソコンを開いて今日の仕事の流れと、出向先をチェックした。

「今日の出向先は.......」

”Land trade bill"

......彼女へのエンゲージリングを買った店の隣だった。

「今日は、厄日だな.......」

「なんだ独り言か?成瀬、相変わらず今朝も早いな」

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