真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
現在籍を置く、「Port universe international」は創業20年に満たない新進気鋭の総合商社で社員数は老舗の半分以下、社員の平均年齢も比較的若い。

総合商社という業態の通り、物流、金融、情報......と多種の事業展開を行っている分、本来相応の社員数が必要なところではあるが、この会社では人材一人当たりのスペックの多才さと若さというバイタリティーを持ち寄って、人員不足をカバーしている。

当然、与えられる仕事量は多い。その分、やり甲斐を感じている。

「じゃあ......、午後には戻って報告します」

部長とは言っても、部下に仕事を任せて悠長に椅子になど座っていられない。

優秀な片腕である愛用のノートパソコンと、かさばる大量の書類をビジネスバッグに詰め込んで、出社してきた道を逆戻り。

社外へと出た俺は出向先へのアポイントの電話をかけながらタクシーを探した。

このニューヨークという街は時間軸が世界の、どの街よりも早く流れている。そんな気がする。何かをしながら何かをする。そうしないと、時間がいくらあっても足りない。

最初の頃は戸惑った。なまじ根が不器用なだけに、電話をかけながらタクシーを拾うという行為が至難の技だった。

それも、今はこの通り。慣れたものだ。

「Hello. I’m Naruse from Port universe international」

「Oh, yes. I'm Hino from Land trade. It'a pleasure to working」

電話口に出た女性の名前にハッとした。

"Hino"

いや、でも......。まさか、そんなはずが無い。

優花と同じ名字ーー。

そういえば、声も似ているような.......。

「Hello?Hello?.......成瀬さんは日本人の方ですか?」

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