真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
帰り道。深夜をまわった中心部の街並みは、すっかり人気も失せて、ネオンばかりが煌々と踊る、空回りしたゴーストタウンと化していた。

その静寂を聴きながら、私は独りで自分の心臓が脈打つドクドクという気味の悪い音と向き合っていた。

ーージークのことは……嫌いじゃない。

広務さんとは、私の方から別れた。

ジークの御両親にお会いするということは、つまり結婚するという意味……。

「優花がオレの両親と会ってくれれば、ようやく先に進める」

「……」

広務さんと別れたこと、はっきりとは言ってないのに。

何も語らない私の返事をよそに、ジークはどこまでも一人芝居を続けた。

「年末の予定は?オレは毎年アメリカに帰ってるんだけど、優花も実家には帰ってる?それなら先に君の御両親に、ご挨拶した方がいいよね?」

実家になんてこっちに出てきてから、一度も帰ってない。

そもそも、私には実家と呼べる場所はない。

母が私を置いて出て行ってから、約10年間。父は私を母の実家に預けた。以来、一度も父は私に会いに来ることはなかった。

経済的援助をしてくれていたことは確かだけど、父親という存在の実態は皆無で、父母不在の私の両親の役割を務めていたのは祖父母だった。

その祖父母も私が大学生のころに亡くなり......。

事実上、私はこの世界で独りになった。

そんな身の上でも、前を向いて生きていこうと決意した中で出会った彼ーー。

……広務さんに会いたい。

「年末年始の予定が分かったら教えて。君の分のチケットも用意しておくよ。旅行がてら、アメリカに一緒に行こう」

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