真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
「12月28日 午前10時30分発 ニューヨーク行き」ーー。

ジークから両親に会ってほしいと言われた日から3週間。あっという間に、この日が来た。

「おはよう優花。起きてる?オレは昨日なかなか寝付けなかったよ。なにせ未来の花嫁を両親に紹介する日だからね。もしかして、君よりもオレの方が緊張してたりして……笑」

夜が明けて間もない頃にジークから届いたLINEには、軽やかな心持ちが冗談ぽく綴られていて、この日の彼の浮足立ったコンディションが如実に表れていた。

......頭が痛い。

ジークがポジティブな緊張で不眠になったというのなら、私が昨夜寝付けなかったのは、決して前向きな理由ではなかった。

ジークの御両親に会うことを決めたのは、もちろん自分自身の決断だけど、それは私がジークに対して100%の純粋な愛情を持っているからではない......。

心の半分以上......いや、離れてから自分でも計り知れないくらいに広務さんが心の中に棲み続けている。

それなのに、ジークと別れずに、それどころか結婚を進めようとしているのは広務さんへの気持ちを自覚すればするほど、恐怖心に酷似した感情も増幅していっているからだ。

広務さんの過去、密会していた見知らぬ女性……。

真冬の明け方は太陽が顔を出すのが遅くて、寝室に残る暗闇が払拭できない記憶を余計に鮮明に思い出させるから、切ない。

私はベッドに横たわったまま、カーテンの隙間から薄暗い空をぼんやりと仰ぎながらジークとのこと広務さんへの想い、そしてこれからのことを考えた。

そうしている間に、しだいに空が明るくなり、気が付けばカーテンの裾から朝日がこぼれ出していた。

希望に満ち溢れているような真新しい、その光とは対照的な重い寝不足の体を引きずりながら、私はどうにかしてベッドから起き上がった。

”行かなきゃ”

そう自分に言い聞かせて、既読スルーしていたジークからのLINEに返信した。

「おはよう。ちゃんと起きてるよ。私もすごく緊張してる......。約束通りに8時に迎えに来てくれる?」

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