真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
午前8時少し前、インターホンが鳴った。

来た。ジークだ……。

ドレッサーの前に座りメイクの仕上げを急ぐ。

ジークが二回目のインターホンを鳴らす前に玄関のドアを開けなきゃ。

今朝は寝坊したわけでもないのに、やけに身支度に手間取っている。

おかげで、朝食の時間はとれなかった。

本当に今日は頭で考える通りのスムーズな行動がうまくとれない。

もしかして、これは。本心とは裏腹にジークとの結婚を無理やり進めようとしている自分が、それでも、どうにかして止めようと潜在意識的にトラブルを発生させようとしているのかもしれない。

でも、そんなの虚しい妄想……。

私は深いバーガンディーのリップカラーを塗りながら小さく呟いた。

結局、唇を動かしてもリップカラーは、はみ出さずにうまく塗れて、とうとう二回目のインターホンが鳴る前に身支度が完成した。

もう、どう抗っても私の運命はジークと歩むように仕組まれているんだ......。

じゃあ、なんで広務さんと出会ったんだろう.......。

意味なんて無くていい。時間を巻き戻したい。

玄関のドアを開ける寸前まで私は広務さんのことを考え続けた。

重い扉を開けて新しい景色を見る。そんな気持ちには慣れないまま、ただ重い玄関のドアを開けると、そこには約束した通りジークの姿があった。

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