真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
広務さんの様子に安心感を覚えた私は、謝るなら今だと思い頭を下げた。

「すみません.....っ!お待たせしてしまって......」

広務さんに謝っている最中、私の視線の先には自分の足元が映っていた。

つま先が汚れちゃった......。

ヒールもだいぶ潰れてるだろうなぁ......。

おまけに髪は乱れてるし、鼻の頭には汗をかいてる。

まるでツイてない。こんなイケてない姿をイケメンに見せる羽目になるなんて。

今日私は、わざわざ断られるために来たようなものだ......。
 
惨めな気持ちいっぱいで広務さんに頭をさげていると、ふわっと優しく何かが私の両腕に触れた。 
   
なんだろうと思った瞬間、今度はスッと上体が引き上げられて上向いた私の瞳に映ったのは、ひろむさんの優しい笑顔だった。  

あまりに至近距離に映った端正な顔立ちと優しい笑顔に、私は胸のドキドキと頬が赤く染まっていくのを抑えられなかった。
 
彼は、頭を下げている私の体を起こした後、申し訳なさそうに言った。 

「謝らないで下さい。俺の方こそ、すみません......。カフェで待ち合わせなんてしないで、日野さんの最寄駅まで迎えに行けばよかった」

ーーえっ......?
 
「今日は、だいぶ遠いところから来られたんでしょう?女性をこんなに歩かせてしまって、本当にすみません......」

彼は私が待ち合わせ時間ギリギリに現れたこと、靴がすり減って汚れていることを見て、そう推測したようだった。
 
でも......、待ち合わせ場所はお互いの住まいの中間でとのことになっているはず。

私は、すぐに。彼は遅刻したことで私に恥をかかせまいとして、敢えてこう言ってくれたんだと分かった。

私は、そんな彼の寛容な優しさが嬉しくて、ありがたかった。 

そして、素直に。この男(ひと)は、素敵だなと思ったーー。 

あれだけ条件に、こだわってお見合い相手を探したのに。結局、私はスペックとは全く関係のないところで広務さんに惹かれた......。

でも、あのかなり打算的な条件を提示しなければ、間違いなく私は広務さんを紹介されることはなかった。

そう考えると、本当に縁とは不思議なもので、この出会いは運命と思ってもいいのかな......?

< 24 / 315 >

この作品をシェア

pagetop