真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
数日前の夜。ジークと私の間にあった嘘が発覚して、私は彼に背を向けた。

私はジークと終わった。

でも、それはあくまでも私側からの結論で。あの時、実際はジークと私の関係には僅かばかりの余力が残っていた。

その証にジークは、私が彼の前から姿をくらました後にグラグラと決別の意思を揺さぶる痛切なメッセージを連続して送ってきていた。

それでも、私は目の前に広務さんが現れたことで、ジークからのメッセージに応じることなく今こうして空港にいるわけで.......。

そんなタイミングでジークと出くわして、まさか彼が広務さんの前で私を”友人”と、呼ぶなんて。

「......」

思いもよらないジークの変貌ぶりに驚いた私は、どう反応していいか分からないまま、驚愕した眼を見開いて無言を貫いた。

ほどなくして、場の様子に異変を感じたであろう広務さんは、私の方を垣間見た直後にジークに向かってこう言い、それから再び私に視線を合わせた。

「モルガン、お前が”友人として”一体、優花の何を分かっているか知らないが.......。優花、俺からも言わせてほしい。優花は何にも無理しなくていい。これから君は日本へ帰って、俺は傍で君を守ることができない。でも、君が君の思うように、いてくれたら俺は少しだけ安心して、ニューヨークに独り残って踏ん張れる」

私がニューヨークを発つまで後少し。

広務さんは何一つ偽りのない、真っ直ぐな眼差しで私を射抜きながら最後の別れを告げた。

彼の言葉は送別と捉えるには熱を帯びすぎていて、胸をどこまでも強く締めつけた。

広務さん......っ!

こんな......、こんな時に言わないでよ......っ!

時は刻一刻と惜しげも無く過ぎていくのに。彼からもらった言葉が胸を何度も駆け巡って切なさが消えない。

涙目で訴えても、無情にも、その時が来て......。

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