真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
週末の午後、私は退会手続きをするために結婚相談所へ向かった。

事前に連絡はしてあった。

その時に電話口に出たスタッフが偶然にも広務さんと私を引き合わせてくれたアドバイザーさんで、私が退会の意向を伝えると、とても残念そうだった。

「そうですか......。今は活動の意思がなくても、いずれまた婚活したくなったとき、いつでも再開できるように、退会じゃなくて休止というのはどうですか?」

「それじゃあ、駄目なんです......」

「......何か、よほど大きな理由がおありなんですか? 差し支え無ければ、お教えいただけませんか? アドバイザーとしてはもちろん伺いますけれど、いえ、私......優花さんには特別に幸せになっていただきたいんです」

”特別に幸せになって”というアドバイザーさんの心遣いに胸を打たれて、本来は広務さんのことを口にすると、どうしようもないくらい切なくなるけど、今ままで親身になってアドバイスしていただいたこと、何よりも広務さんに出会わせてくださったことに感謝して、私は重い胸の内を明かした。

すると、アドバイザーさんは一呼吸おいて、思い切った感じでこう言った。

「アドバイザーとしては他言してはいけないことですが......、私、個人の話として聞いてください。私は成瀬さんの意思を継いで、優花さんに特別に幸せになっていただきたいと思ってるんです」

「どういうことですか!?」

「優花さんから成瀬さんとの交際終了の報告を受けてから暫くして、成瀬さんから連絡があって彼も今の優花さんと同じように退会したいとおっしゃいました。私は、もちろんアドバイザーとして他の女性会員を紹介することを提案しました。ですが......成瀬さんは頑として拒否して、優花さんと縁がなかった以上、相談所に在籍している意味は無くなったと言いました。そして、自分が退会する代わりに優花さんには、絶対に縁を繋いで欲しいと。......成瀬さんは、心から優花さんを愛していたんですよ」

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