真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
アドバイザーさんの言葉を受けて、遠く離れているはずの彼の姿が途端に、私の前に鮮明に現れた。

究極的なホログラムで心の中に描き出された広務さんは、ひしとスマホを握りしめて長身の背中を、らしくなく丸めながら、端正な顔立ちの中央に皺を寄せて必死に話していた。

”心から愛していた”

そういう気持ちを体現した姿だった。

胸が強く締め付けられて痛い......。

「広務さんが、そんなことを......」

「そうです。優花さん、成瀬さんの気持ちを無下にしないためにも、活動続けて見ませんか?とりあえず今は休会ということに.....」

広務さんの気持ちを知って、私はむしろ結婚相談所を退会するべきだと思った。

「私も、意味がないんです。広務さんと縁が繋がらなかった以上、この先他の人と縁が繋がることなんてありえない......。それくらい私.....広務さんのこと想ってました」

目に溜まった涙がこぼれ落ちないように、私は少し目線を上向かせながら語った。

「そうなんですね.....」

アドバイザーさんは、それ以上何も言わなかった。

退会することが決まった私は、事務所奥の個室へと案内された。

「ただいま別のスタッフが参りますので、おかけになってお待ちください。」

私は言われた通りに、フレンチカントリー風の木製の椅子に腰掛けてスタッフを待った。

椅子に合わせて誂えられた机もまた、ノスタルジックな可愛らしさを持ったアンティーク調のデザインだった。

それだけではない。事務所全体がウェディングやカップル、恋を連想させるような、ほんわかとした清純さを演出するパブリックで飾られている。

見事成婚退会することになったカップルは、そんな場所に二人で訪れて、二人で退会届を書くことになる。

私のように、一人で退会する会員は、本当にこのような華々しい場所にはふさわしくない......。

「お待たせいたしました。」

人一倍感傷的になっていたところに、退会届を持ってスタッフがやってきた。

その人は私の横を通り過ぎると、対面の席に着いた。

スタッフが席に着いたタイミングで私は顔を上げた。

「あなたは......!」

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