真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ～

私は驚きのあまり顔の筋肉が強張った。

対面したスタッフは明らかに見覚えのある人だった。

透明感のある明るいブラウンヘアーをエアリーに巻き、軽くカールさせた印象的な長いまつげ。

テラコッタのリップカラーで彩られた唇は口角が上がるたびに、カフェの間接照明に艶めいて華やかな顔立ちをより一層引き立てていた......。

間違いない。

今、私の目の前にいる彼女は。忘れもしない、あの日、広務さんとカフェで密会していた女性だーー。

「はい......？」

彼女は、驚愕の表情の私をまるであざ笑うかのように。全くもってつゆ知らずといった返事をしつつ、退会届を両手で持ったまま、その大きな瞳をパチくりさせていた。

「あなた、以前カフェで広務さんと......」

「......あっ！それは......成瀬さんが、優花さんへプロポーズをなさるという報告を受けた時ですね」

そう言うと私よりも、ずっとずっと綺麗な彼女は、とても気を使っていると分かる苦笑いに近い笑顔を浮かべた。

ーーえ？

あっ......、そうか......。

「あの時は、本来事務所へ来ていただかなくてはならなかったんですけど。成瀬さんは非常に、ご多忙ということで特別に外でお話を伺ったんです」

この女性はアドバイザーさんだ......。

私が見た広務さんとのツーショットは、この女性にとって、れっきとした仕事だったんだ。

それなのに、

あろうことか私は広務さんの気持ちを疑ってしまった......。

ずっと密会だと思い込んでいたあの光景。

その真相は、広務さんが私へプロポーズをするという決意を結婚相談所へ報告した場面だった。

「そうだったんですね......」

悔やんでも悔やみきれない。

私はテーブルの下に隠れている手のひらをぎゅぅっと握り、どうにか気持ちを押し殺した。

「こちらが退会届です」