真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ～

最終章ーーそれから。

完全なる独り身。出会いのつてを断捨離した私は、それ以降何の変哲も無い日常を送っていた。

けれど密かに抱え込んだ胸の痛みは、あれから何日も経っているのに、癒えるどころか日増しに傷が深くなる一方で......。

特に、仲の良いカップルが上司の目を盗んでオフィス内でアイコンタクトなんてとってるのを目撃した時には尋常じゃなく胸が苦しくなる。

”ミカ、キョウハ、ザンギョウダカラ。サキニカエッテテ”

通路を挟んで私の机の斜め向かい。この課の主任、横澤さんは私の隣で仕事をする同期の実加へ、今日も、しきりに柔和な笑顔を向けて秘密の暗号を送り続けていた。

ラブラブカップルだけが解読できる秘密の暗号。でも、こう毎日毎日見せつけられちゃ、いい加減秘密じゃなくなってるわけで。

私にバレてることを知ってか、知らずか。とにかく実加は横澤さんと目が合うたびに鼻歌交じりに上機嫌になる。

そりゃあ......、そうよね......。

何しろ実加は横澤さんと、もうすぐ結婚するんだからーー。

「ハネムーンは、どこ行くの？」

よせばいいのに。私は実加の鼻歌が聞こえたついでに、何となく聞いてみた。

「ニューヨークッ！」

直後に”ズキンッ”と、心臓が抉られた。

動悸がしたのと同時に私の表情が曇ったのを察した実加は悪気なく正直に答えたことにハッとして、

「パリも良いなぁっ！......ごめん」

と、追記した後に消沈した。

「気つかわなくて、大丈夫だから。別れてから、もうだいぶ経つんだし……」

自分で自分をフォローしつつも、内心はグリグリと胸が抉られるばかりだった。

結局、そういう私を見抜いた実加は少し気まずそうに、どもりながらこんな提案をしてくれた。

「あっ、あのさ……、今度秀一の友達に会ってみない？荒療治かもしれないけど、昔の恋を忘れるには、新しい恋だよ？」