真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
オフィスを出て窓から外の景色を見渡すと、すっかり陽が落ちていて燻んだ都会の空に、ほんの数える程の星粒が浮かんでいた。

ニューヨークで見た空も似たような感じだったけど、灰色の空の下に広がった夜景は今いる街よりもずっとずっと煌びやかだった。

あんな無数のネオンの中で、あの夜広務さんと再会できたことは奇跡以外の何物でもない......。

やっぱり、実加の言う通り。私は今の、この気持ちを携えて必然的に広務さんに会いに行くべきなんだろうかーー。

「会えるのかな......」

「会いたい人には、会った方がいい。シンプルにそう思うよ」

シースルーエレベーターの向こうに見える色鮮やかな都会の夜景に背を向けて。実加が宥めるように言った。

今まで私は......、どうしようもないことに捉われ過ぎていたのかも知れない。

広務さんに会いたい。 

それよりも勝る感情は、今も前もない。

「うん」

広務さんに会いに行く。私は誓いを込めて頷いた。

すると、それを見ていた実加も静かに微笑んで頷いた。

不思議な連帯感と安堵感が生まれた。

そして、エレベーターは実加と私を乗せて静かに階層を下り、外の景色はブルーグレーの空に浮かんだ星の瞬きが微かに光って、アフター6のゆるりとした時間が流れた。

「なんか急激にお腹すいてきた」

しばらく無言でエレベーターに揺られていた私達の空気を実加が唐突に変えた。

「夜ご飯食べに行こっか」

「うん。何する?」

「何しよっか?何食べたい?」

晩御飯を一緒に食べに行くことになった私達は、夜ご飯会議を繰り広げつつエレベーターが一階に着いたところで、ああでもないこうでもないと言いながら仲良く会社ロビーを行進した。

「ねっ!あそこのパスタ食べたくない?」

「あーっ!食べたいっ!」

ようやく今夜のディナーも決まって。そういえば、あのお店はスマホのクーポンでスィーツが半額になったはず......。

思い出した私は、早速スマホを取り出して確認する。

「そうそう。やっぱりね!ねぇ、やっぱ半額だって!」

私はスマホをかざして実加の前にチラつかせた。

......なのに。あれ?反応が薄いな。

半額クーポンゲットで、スマホ片手に嬉々とする私をよそに、なぜか実加は呆然と遠くに視線を送っていた。

「ねぇ、実加?」

私は怪訝な表情で実加の前に、”ずいっ”と、顔を出した。

「優花......、あの人。見て」

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