真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
ジークと会うのはニューヨークの空港で別れた以来だった。

だから、本来は久しぶりの挨拶くらい言ってから話に入るのが適当な気がした。

けど、彼が私の顔を見るなりぶつけて来た本題に、そんな良識を意識する暇もなく、私は驚愕した。

「え......!?どうして、あなたが母のことを!?」

「父さんから聞いたんだ」

「ジークの、お父さんから??」

「そう。優花、君がオレの父に会った時、父の反応に何か違和感を感じなかった?」

「違和感......?あ.......!」

「うん、オレも。あの時、父さんの優花を見る目に、何か特別な思いを感じたんだ」

ジークがお父さんの私を見る目に対して特別な思いを感じた部分と、私がジークのお父さんと会った時に覚えた違和感の個所が同じかどうかは分からない。....... けど、

うん。今考えても、あそこまでの大企業のCEOで社交にも明るいはずの方が、たとえ一瞬でも初対面の来客に対してあんなにそぞろな態度を示すはずがない。

ジークのお父さんが私の顔を見た途端、まるで時が止まったように凝視したのは、きっとただ事ではない憶測を心の中で巡らせていたからかも知れない。

それがもし、私が子供のころに生き別れた実の母のことなら.......。私はジークの知っている話を聞く必要がある。

「あなたがお父さんから聞いた話......聞かせて」

「わかった。場所を変えよう」

ジークの提案に私はしっかりと彼の目を見ながら頷いた。

するとジークも私の覚悟を持った様子に応えるように首を縦に振った。

それからジークと私は落ち着いて話が出来る場所まで移動するために連れ立って社外へ出た。

その間、私達の口は重く会話をすることはなかった。

「近くに車停めてあるから」

業務連絡的にようやくジークが口を開いた。

しかし、それに対して私は無言で頷き、それを確認したジークは黙って前を向いた。

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