真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
「......お母さん......」

母の夢を久しぶりに見た。

母が夢に出てくる時、私は決まって寝言で母を呼びながら目が覚める。

さっきまで夢の中で見ていた母は、私を残して出て行った当時のまま若い姿だった。

あの時から、もう20年が経つ......。

実際の母は、もう50代。そして、私は30代に入ろうとしている。

夜が明けて明るくなった飛行機の窓に映った私は、すっかり一人前の女性の顔つきをしていた。

だけど、心は子供の頃の記憶を払拭できないまま取り残されている......。

ニューヨークで、もし母に会ったら何か変わる?

分からない。

「We will be landing at......」

考え事を遮るように機内アナウンスが流れて着陸まであと20分だと分かった。

飛行機を降りる準備をしなきゃ。

結局ニューヨークを目前にしても、母に会いに行くか、どうするのか決められなかった。

ニューヨークに来た本来の目的は、広務さんに会うこと。

私は機内モードにしてあるスマホを見つめながら、静かに決意を確かめた。

「Please now make certain ......」

2回目のアナウンスが流れてしばらくすると機内が揺れた。

シートに深く腰掛けて身構えていると、そのうち機内の揺れは、おさまり飛行機は無事に空港に到着した。

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