真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
飛行機を降りたあと入国審査を終えて、ゲートを抜けるとニューヨークの匂いがした。

以前にも感じたことのある空気。記憶がフラッシュバックする。

あの時、広務さんは私の隣にいてくれて......。この先もずっと一緒にいてくれると思わせるような錯覚を巻き起こした。

独りで日本へ帰国した後も、彼が私へ贈った言葉はどんなに時間が過ぎ去ろうと、胸の奥に深く根付いて再びニューヨークへと舞い戻らせた。

この日のために手に入れたニューヨーク行きのチケットは片道。

私の未来は彼が進む運命に委ねられている.......。

「090......」

LINE電話以外で通話するなんて今の時代滅多にない。スマホのアドレスから電話をする時は改まった要件がある時。

例えば仕事とか、愛の告白とか......。

私は空港を出る前、早々に広務さんへ電話をかけた。

呼び出し音をききながらスマホを耳元に当てていると、自分の指先が震えていることに気がついた。

数ヶ月前この空港で別れて以来、彼とは連絡を取っていない。

私からも連絡しなかったし、彼からも何の音沙汰もなかった......。

覚悟を決めて日本を後にしたはずが、現実を目の当たりにして一気に不安に襲われた。

「......やっぱり」

飛び出し音は、そのうち機械的なアナウンスに変わり、結局広務さんが私からの電話に出ることはなかった。

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