真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
ニューヨークに来て、まさかこんなにも短時間で路頭に迷うなんて......。

ーーううん。でも、きっと彼は忙しいからに決まってる。

らしくなく。強気な予想を立ててみる。

だって、あの時の彼は本当に......、

私を愛してくれていた。

自分を勇気付けるために前向きな記憶だけを呼び覚まし、もう一度スマホの発信画面をスクロールする。

呼び出し音が鳴り続ける間、脳裏に浮かんで消えて行くのは、初めて会った日のこと、初デート、プロポーズしてくれた時、それから......数ヶ月前偶然に再会を果たした夜の事。

あの夜に奇跡が起こった事こそが、これからの未来は明るいって証拠ーー。

だから、お願い。

広務さんに、繋がってーー!

1コール、2コール、3コール......。

それでも、一向に通話に切り替わらず、最初に電話をかけた時よりもプレッシャーがのし掛かった。

さっき、留守電に切り替わったのは何コール目だったっけ?

呼び出し音の回数が増すごとに、私の動悸は強くなった。

嫌な緊張。その成分の大半を占めているのは恐怖心。

広務さん......。

私からだから、電話に出ないの......?

ーー違う。そんなわけない。

まるで頭の中に天使と悪魔がいるみたいに、私は独りで格闘した。

随分と永く感じたその時間は、実はほんの数十秒の出来事で。呼び出し音の終了とともに打ち切られた。

「......もしもし」

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