真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
広務さんの切ない声に、私は胸がギュゥッと締め付けられた。

「はい......」

私は涙声を懸命に隠して、彼に返事をした。

これ以上、彼の不安に駆られた声を聞きたくなかったから。

惚れた方の負けだ。

そして、彼も又、私に惚れているーー。

思い上がりじゃない。

彼の声色と、私の両腕に優しく触れる大きな手の、ぬくもりからそれを感じ取る事ができた......。

だけど、私は彼の方に向き直る事が出来なかった。

泣いて目が充血しているのを見られたくなかったから。

これからどうすればいいのかと、相変わらず背を向けたまま肩をすくめて俯いている私に、彼が再び呼びかけた。

「優香さん......」

「目にゴミが入っちゃってっ、すみません......っ、ちょっと待ってください」

咄嗟に口をついて出た嘘。

しかし、彼は疑う様子もなく。先ほどとは打って変わり、今度は慌てた声で言った。

「大丈夫ですか? 俺に見せて?」

なんて過保護な人なんだ、この男(ひと)は。と思いながら、私の胸は温かさで満たされていたーー。

そして。ちょうど、この時。私達の、じれったいやり取りに終止符を打つかのように、駅のオルゴール時計が午前10時の鐘を鳴らした。

全部、私の理不尽な勘違いだった。

広務さんは約束通り、待ち合わせの場所へ遅れずにやって来たーー。

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