真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
こう思う私は、やはり変態だろうか?

これから私は彼の車に乗る。

そこは、とてつもなく彼のプライベートに踏み込んだ空間だ。

きっと扉を開けて乗り込んだ瞬間にカーコンロンの香りがフッと私の鼻先を掠め、その甘くて妖艶な香りに酔いしれている間に彼の長くて均整のとれた腕が何の躊躇いもなくバタンッと助手席のドアを閉めて、それから車はエンジンを唸らせて真夏のハイウェイ目指して走りだす。

そして、ひとたび走り出した彼の愛車から降りることは、かなわない。

ハンドルを握るのは彼ーー。

つまり私はこれから約一時間、彼に全権を預けることになる。

それって、つまり。

何されても逃げ場がなくて、まるで裸にされているのと同じってことでしょ!?

......いや、

それは、さすがに違うか。

まぁ、とにかく。私はこれから彼と二人きりの車内で何かしらの期待をしていることは確かだ。

「なんだか、顔が赤いですけど大丈夫ですか? まさか、熱中症にかかってしまったんじゃ!?」

何の事情も知らない彼は、不埒な妄想で脳内がパンパンに膨らんだ赤ら顔の女を相変わらず真摯に心配してくれた。

「大丈夫ですっ。少し、逆上せただけです.......」

私は、どうにか。今にもはみ出しそうな彼へのけしからん妄想を、鉄壁の営業スマイルで押さえつけた。

それにしても本当に申し訳ない。

いくら彼のことが好きだからって、私のこの獣的な発想なんとかならないものか......。

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