真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
だけど。

声が聞きたいからって、この時間に電話をかけるのは。付き合ってもなく、知り合ったばかりの男女の行動として全くもって非常識極まりない。

今、電話しようものならば。常識のない女だと思われて、彼の花嫁候補から落選した挙句。デートの話はなくなり、きっとフラれるに違いない......。

結婚相談所という堅実な場所を通して出会ったから、余計にそんな気がする。

仮に、結婚相談所というシチュエーションを除いても。情熱に任せて、真夜中に電話するという学生のノリが通じるような歳じゃない。

なのに。今の私は、そういう様々なハードルを越えてしまいそうなほど彼への気持ちが高まっている。

でも、越えちゃダメだ。

彼に嫌われたくないのは、もちろんだけど。それ以上に。彼に迷惑をかけたくないし、困らせたくない。

ここはひとつ。自分の気持ちに大人の対応をして渋々寝ることにする。

そうして眠ろうと、瞼を閉じると寝かせないとばかりに彼の顔が浮かぶ。

瞼の裏に映し出された彼は。笑顔だったり凛々しい表情を見せたり伏し目がちな色っぽい眼差しを向けてきたりと、私の胸を高鳴らせた。

私は瞼の裏の彼を見つめながら。毛布をぎゅっと抱きしめて、いつか彼に抱きしめられることを願いながら、長い夜をやり過ごした......。

< 5 / 315 >

この作品をシェア

pagetop