真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~

「涙の理由」 

いつぞや。

広務さんとの交際成立前に、待つ女は卒業しようと誓ったのに。 

彼と恋人同士になった直後に、待つ女に返り咲き。 

今日は土曜日だというのに。彼は、急ぎの仕事があって休日出勤。

よぎる不安......。 

本当に仕事?

このまま、彼からの連絡が途絶えたらどうしよう......。 

ーーこれは、私の悪いクセ。

広務さんはそんな男(ひと)じゃない。 

第一、

彼は、お母さんじゃないし。

花柄のワンピースも着ない。 

代わりに、

私が花柄のエプロンを裸のまま付けて、彼の帰りを待つ。

心の鎧も、過去のトラウマも、何もかも脱ぎ捨てて、 

素顔のままで。 

そして、

裸のままで。  

広務さんからの連絡を待つ間は、私にとって絶好の妄想タイム。 

こんな時こそ思いだせ。

彼の温もりを。

熱いキスを。
 
広務さん、今日仕事が終わったら私に熱く、そして深いキスをして......。

そんな。今にも、はち切れそうな胸の想いが通じたのか、直後にスマホが踊りだした。

平日のスーパーサイレントモードとは打って変わり、休日の着信音量はレベル6。さらに、バイブレーションも作動。

一刻も早く彼の声が聞きたい私は、テーブルの上で乱舞するスマホを光速で取り上げ、マッハでスクロールした。

そして、勢い良く立ち上がると左手を腰に当て、仁王立ちしながら笑顔で彼に第一声を放った。

「もしもしっ!」

「もしもし優花?ごめん、お待たせ。今、仕事終わったよ。出掛ける準備は出来てる?」

「お疲れ様!うん、出来てるよっ!」

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