真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
彼は私の顔を見た途端にフッと静かに息を吐いて、力の抜けた穏やかな笑顔を見せてくれた。

「優花の顔見たら、疲れが取れた」

そう言って彼が私に見せてくれる、仕事中は決して見ないであろう素顔の笑顔に、胸がキュゥッと絞られた。

「今日は、せっかく休みだったのに......。俺が仕事のせいで、どこにも連れて行ってあげられなくて、ごめん」

休日返上で仕事をしてきた自分のことよりも、彼は私を退屈させたことを気にして眉尻を下げた。

私はそんな彼の曇った表情と後ろめたく思う気持ちが切なくて、再び笑顔になってもらいたいから、努めて朗らかに言った。

「ううん!広務さんこそ本当は、お休みだったのに。お仕事、おつかれさまっ!お腹空いてない?」

駅前には、たくさん飲食店があるから、少し歩けばデートにふさわしいオシャレなレストランがきっと見つかるはず。

休日返上で仕事をしてきた彼を労ってあげたいーー。

「うん。少し、腹は減ってるけど......。でも、まだ夕食には早い時間だし、それに優花はどこか行きたい場所はないの?」

「私、広務さんと一緒に居られるなら、どこでもいいのっ」

......少しだけ、嘘ついたかも。 

彼と付き合い始めて一ヶ月半。 

あの、花火大会デート以来、私は彼の助手席に乗っていない。 
 
それどころか。丸一日デートしたのは、たった2回だけ。

お泊まりデートなんて、もってのほか。 

ーー私は、まだ彼に抱かれたことがない。 

交際一ヶ月半だから。まだ早いと言われれば、そうなのかもしれないけど......。

ましてや。結婚相談所っていう堅実な場所で知り合ったから、石橋を叩いて渡るくらい慎重に行動するのも頷けるけど。 

......けど、 

彼と私は、もう列記とした恋人同士。 

そして、何より大人のカップル。  

心は、もちろん。いつも抱いていて欲しい。

それから、時々は。身体でも伝えて欲しい。

「優花?どうしたの?」

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