真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
「ここはどう?」

彼が選んだお店は、駅前通りから少し離れた場所にある、隠れ家的とはこういう所を言うのかと誰もが納得するような一見デザイナーズハウスかと見紛う、一面ガラス張りのオシャレなイタリアンレストランだった。

派手なネオンサインもなく、大きな看板もない代わりに、お店の入り口に掲げてある緑色のチョークボードには今日のオススメ料理と余白に”個室あり”と手書きで書かれていた。

さらに、このお店は木製の白い柵で建物が囲まれており、これならたとえ個室が空いていなくて窓側の席に通されたとしても、道行く人の目を気にすることなく彼と籠れる。

「素敵な、お店だね」

すっかり、このお店が気に入った私は、体をくるっと広務さんの方へ向けて彼の顔を見上げながら瞳を輝かせた。

「優花、すごく気に入ったみたいだね。よしっ、ここにしよう」
 
広務さんは、目をキラキラと輝かせて喜びを露にしている私を柔らかい笑顔で見つめながら、そっと肩を抱いて入り口の扉を開けて中へエスコートしてくれた。 

彼は、いつも本当に優しくて紳士。

私を、まるで壊れやすいものを扱うかのように大切にしてくれて、そして、好きだと言ってくれる。

彼が優しくしてくれるたびに、好きだと言ってくれるたびに、今まで押し殺してきた"寂しい"という心の叫びが鎮まって、"孤独感"という凝り固まった心のしこりが溶けて行く。

ーー彼に、もっと甘えたい......。

途端に、こんな気持ちが湧き上がったのは。外観もさることながら、内装もヨーロッパの教会を思わせるような繊細なデザインの、このレストランに乙女心を刺激されたからかもしれない。

ロマンチックな気分で店内をポーッと見渡していると、ほどなくして、お店のスタッフがやってきた。

「いらっしゃいませ。二名様ですね。只今、お席へとご案内致します」

「すみません、個室は空いてますか?」

空席を確認しに戻るスタッフへ彼が、すかさず、そう伝えて私達は無事に二人きりの空間を手に入れることができた。

「コースにする?あ、でも優花お腹空いてる?一品料理の方がいい?」

彼はここでも私を気遣ってくれて、そんな彼の優しさに私は先ほどから胸に、いだいている想いを、どうにも押しとどめておくのが難しくなってしまった。

たまには。自分から甘えてみてもいいよね......?

明日は日曜日で、彼も私も休み。

ーー今日は帰りたくない。

「あのね、広務さん。今日は......」

「うん......」

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