真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
「コンビニ寄ってく?」

確かに、これは大変な重要事項だ。

彼の部屋へ行くということは、今日決まったこと。

だから当然、お泊まりの準備は何もしてきていない。

でも、それでいいんだ。

あらかじめ。お泊まりの約束をして、荷造り完璧。大きめのトートバックに、愛用の化粧品から新しい下着、翌日の着替えまで詰め込んで準備万端整えてきましたっ! ......なんていうのは相当、情緒に欠ける。

恋には情緒が必要不可欠だ。

その点、今の私達は満点と言える。

土曜日のこの時間。繁華街は、ちょうど呑み時のピークを迎えており、レストランや居酒屋が賑わっている代わりにメインストリートの人通りは少なく、駅前のイルミネーションは往来に遮られる事なく宵闇の下、鮮やかに煌めいている。

そんな情景の中、彼と私は互いに気遣いながら歩調を合わせて寄り添い、しっかりと手を繋いで、これから始まる初めての夜に向けて歩んでいる。

「あっ、コンビニあったよっ」

駅前のコンビニ店舗数はかなり多く、僅か数百メートルの間に様々な店名のコンビニがひしめいている。

私が指差した店のすぐ近くにも、別のコンビニが出店していて、実は私は後者の方をよく利用するのだけれど、今日は特別。

些細な個人的好みを優先して、わざわざ時間を割いて道路を渡るよりも、一秒でも早く買い物を済ませて彼と二人きりの時間が欲しい。

そういう時、コンビニは時短で買い物するのに最適な場所だ。

大型スーパーでは端から端まで歩き回らないと買い揃えられないものが、コンビニでは、ほぼ全て手に入る。

お泊まり用のスキンケアセット、下着にストッキング。そして、健全な男女の営みには欠かせない、薄いゴムで作られた例のアレも......。

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