真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
平常心な質問とは裏腹な彼の指先の動き。

ただ重ねられていただけだった彼の手は、いつの間にか私の指の間に深く侵入していて、私は完全に手の動きを封じられていた。

「えっ......とね。私、この時間は......」

指先の間から伝わってくる彼の熱に絆されながらも、私は懸命に質問に答えようとした。

「俺はいつも、この時間はまだ仕事してるかな。でも、今日は優花と一緒に居られるから、たくさん話をして優花の事もっと深く知りたい......」

広務さんは私の尻つぼみになっていく声に、被せるようにして艶っぽく伸びやかな声色を放った。

ーー何だか、いつもの彼らしくない。

いつも彼は私が答えるまで、じっくりと待ってくれるのに。今は、まるで形勢を自分の優位に誘導して、テリトリーに入った獲物を狙う狼みたい。

私の恋心をキュゥッと甘噛みして、ときめきと愛情欲求をとめどなく絞り出す優しい狼......。


繋がれた右手は無抵抗のまま、じわじわと彼の熱によって温められていく。

熱い......。

蜃気楼が浮かびそうなほど、眼差しが熱く瞳が揺らめいているのは、彼への恋熱に犯されているから。

すっかり瞳が蕩けて、不埒な顔つきを晒している私へ彼は甘く囁いた。

「そんなに、かわいい顔見せられたら、こうしたくなるに決まってる......」

彼は今まで強く拘束していた私の右手を解放した代わりに、私の頬を今度は両手で包み込んだ。

「んっ......」

私が従順に唇を委ねると彼はフゥッと、その形良く柔らかな唇をゆっくりと押し当てた。蜜を内包させて甘く蕩けた彼の口内は重力と共に、私の口唇を沈ませた。

彼の唇を受け入れて形を変えていく私の口元が意図せずに開き内部を覗かせた時、多量の蜜を纏い濡れた彼の舌先が優しく入り口を分け入って、やがて私の舌先と繋がった。

生温かく、滑らかな彼の舌先が口内を弄る感覚が私の五感と思考を甘く麻痺させて、ただひたすらに彼への情欲だけを容赦なく貪らせた。

すっかり彼のためだけに仕立て上げられた私の身体は、彼の指先が僅かに肌に触れただけでまるで針で神経をなぞられているかのように、ビクビクと反応を示した。

「......っ」

そして、私の情欲を刺激する彼の愛撫に身体が熱を帯びて、深い吐息を聴かせながら甘い痺れに身をよじり出した頃、彼はキスを止めたーー。

「ねぇ、優花さぁ......」

< 68 / 315 >

この作品をシェア

pagetop