真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
処理しきれない感情に直面した時に、お酒に頼るのは、大人なら有りがちな事。

このバーが、こんなに賑わっているのは決してプレミアムフライデーの影響ばかりではない。

私のように寂れた事情で、お酒を煽っている人だっているはず。

独りカウンターに座ってマティーニを飲みながら、私は自分と同類がいないかと薄暗い店内をぼんやりと眺めた。

しかし。同類どころか、こんなに早い時間から独りで、お酒を煽ってる人は私くらいしかおらず、深いため息をついて自分しか座っていないカウンターに再び視線を戻した。
 
辛口のマティーニをハイペースで飲み干して、おかわりを注文しようとグラスから唇を離した時、聞き慣れた男性の声で名前を呼ばれた。 
 
「ジーク!」

「こんな所に独りで......。どうしたの? 今頃、アイツとdateしてるんじゃなかったの?」

「うん、それがね......」

ここで適当な嘘をつく事も出来たのに、私はジークに本当の事を言いたかった。

その理由は、多分......、甘えたかったからーー。

「オレ、今無性に腹が立ってる。オレが、ここに来るまで優花が独りぼっちだったなんて......」

私は自分を悲劇のヒロインに仕立て上げ過ぎてしまったのだろうか?

私の話を聞いたジークはバーボンの入ったグラスを力を込めて握り、そこに荒々しい怒りの感情をぶつけているようだった。

予想を、はるかに超えたジークの反応に私は焦った。

「私は大丈夫だよっ!ありがとう、同情してくれてっ、あっ!てゆうか、ジークこそ一人でお酒呑みに来たの?」

「うん。どうにもならない気持ちを落ち着かせたい時に、一人でここに呑みに来るんだ。でも、この気持ちを落ち着かせるのは辞めた」

質問をしたにもかかわらず。まるで独り言のような答えを返された私が彼の言葉の意味を考えていると、不意に指先に温かい感覚が伝わった。

そして、ジークはカウンターに置かれた私の右手を強く握り、体ごと私の方を向いて身を乗り出した。

「優花を寂しくさせる、あんな薄情なヤツとは今すぐ縁を切って、これからはオレと......」

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