愛人
睨む私を意に返さず、女は私にすがるような仕草と高揚した笑みを浮かべながら、私を見つめた。

「貴方を私だけのモノに出来て嬉しいわ。…一つだけ残念なのは、二度と貴方の腕の中に入ることが出来ないことかしら」
「二度と君を抱かなくて清々する。出来れば姿も見たくないがね」
「つれないことを言わないで。…また来るわ、貴方に会いに」

女は手を振ってゆっくりと歩き出し、暗闇へ消えていった。
女が居なくなっても女の匂いが辺りを漂う。私はせめてもの抵抗として口元を手で覆い、残り香と女が消えることをジッと待った。
終わり
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