【短編】マイ・ファニー・バレンタイン・デイ
「にーのみやぁ、ソワソワする気持ちはわかるが諦めろ。お前にチョコをくれるモノ好きはいないぞ」


二宮君を当ててきた先生が、からかうようにあたしの肩をポンポン叩いて言うと、
クラス中で爆笑が起こった。

「あ……」

そうか、今あたし二宮君なんだ。

二宮君が当てられたら、あたしが返事しなきゃいけなかったんだ。


そんでこんなとき二宮君なら……


「せんせーひでーな、俺のファンはチョコ会社の戦略に踊らされないクールビュウテーばっかだからいいんだよw」


またどっ、っと笑いが起こり、


「ソーヨソーヨw」


朝あたしの背中を思いっきりどついてきた親友の中野君が裏声で嘘くさい声援を飛ばす。


「いいから黒板、訳せー」


笑いながら先生が黒板の英文をチョークでコツコツ、と指したから、
思わず反射的に訳してしまった。


「おー、どうした二宮、やればできる子だったか!」


しまった。


二宮君、ぶっちゃけ成績はあんまり良くないんだった。


おー、と低くどよめく声に重なるチャイムが、授業の終わりとランチタイムを告げた。
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