【短編】マイ・ファニー・バレンタイン・デイ
みんなが席を移動しはじめて、いつものメンバーでランチが始まる雰囲気の中、
あたしの目の前、二宮君の机の上に見覚えのある手がバン、と叩きつけられた。

それはまぎれもない、見慣れた、あたしの手。


恐る恐る見上げると、鏡で見慣れた、あたしの姿。
もちろん今は鏡なんかじゃなくて。

「ちょっと、いい?」

睨むような視線であたしを見つめたあたしが、そう言った。

ややこしい。

二宮君の姿をしたあたしを、中村結、つまりあたしが見て言った。

うん、やっぱりなんだかわかんないから、もういいや。


「中村、二宮に告んの?」

背中ごしに中野君の声がしたけど、返事をする間もなく腕を掴まれて教室を出た。
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