おとぎ話
第1章



私の朝一番のお仕事は涼くんを起こすことだ。




12年前、私は両親を事故で亡くした。

駆け落ち同然で結婚した2人に親しい親戚はおらず、ひとり娘である私はどこにも行く場所がなかった。

しかし、父の古くからの友人で、家族絡みの付き合いをしていた一ノ瀬夫妻が私を引き取ってくれることになり、それから12年間、私はこの一ノ瀬家でお世話になっている。


高校にはいけないと思っていたのに、当然のように志望校を聞かれ、当然のように通わせてくれた一ノ瀬夫妻に、今度こそ恩返しをと就職を考えていた。

しかし、それを話すとこれまた当然のように

「大学まで通わせるつもりで君を引き取ったんだから、何も甘えることはないんだよ。」

「そうよ、それに星ちゃんは勉強が好きでしょう?星ちゃんが好きなことをとことん突き詰めて言ってほしいわ。」

と言ってくれた。

この時ばかりは普段人前で泣かないようにしている私も大号泣。

実の両親のように大切に育ててくれた一ノ瀬夫妻には感謝しても仕切れない。

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