終わりで始まる進化論~第一部~
プロローグ
ハンプティダンプティは塀に上がった。
ハンプティダンプティは落っこちた。
偉い貴族も力自慢の大男も
ハンプティを元に戻せなかった。






辺り一面は真っ白に覆われていた。雪原という訳ではなく、白一色に塗り潰された部屋に幽閉されているのだろう。








人影は見当たらないが、リズムに乗せた聞き覚えのある童謡が微かに聴こえてくる。






いささか、さっきよりも自分のいる部屋へと近づいてきている様に思えるが、その方角は掴めないままだ。






記憶を失っているのか、こめかみの辺りに鈍い痛みを覚えたナツキ=ノースブルグは上半身を気だるげに起こす。





ここは一体どこなんだろう?そもそも、俺はいつからここに居たんだろう?





前頭葉をフル活動させるつもりで思考回路を巡ってみたものの、ナツキが思い出すのは昨日の夕刻までの記憶だけだ。





学校に通い学業に励んだ後は、友達と別れてマンションへと帰宅したはず……。





「あ、そうだ!」





 友人とのメールのやり取りの途中で制服の中に携帯電話を入れておいたのを思い出して、ポケットの中を探る。





期待を込めて待受画面を覗き込んだが、右上の「圏外」のロゴに肩を落とした。
分かってはいたけれど、現実とは残酷だ。

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