終わりで始まる進化論~第一部~
普段は貶すことしか無かった羽柴の評価としては意外なものだったので、ナツキは問いかけるものの羽柴は微かに微笑んだのみだった。
対してシノミヤはどこか険しい表情になるものの、きっとこの武器が羨ましいのだとナツキは勝手に想像するのみで留めておく。
「もう一つは、お前さんに選ぶ権利があるが一つ提案しておこうと思ってのう。対進化生物(ハーフタイプ)の事はもう学習済みじゃろう?これから先、お前さんがここに残るならば、必ずぶつかる選択肢じゃわい。坊主、どうしたい?」
「ふざけんな!またあんたらは勝手にそんな話持ちかけてきてんのか!こいつは……」
ナツキが答える前に側にいるシノミヤが激昂する。その勢いに気圧されたナツキは思わずシノミヤに視線を移す。
勿論、初めてノアの話を聞いたときの人体実験の話をするシノミヤの表情は明らかに何か不満や怒りが見えていたが、ナツキのことに対してもここまで怒るのは意外だった。
「わしはあくまで選択肢の話をしとるだけじゃ。少しは冷静に物事考えられるようになっとるかと思ったが、相変わらずじゃのう?シノミヤ」
「どう解釈しようがお前らの勝手だろうが、俺は反対だ。このアホがそこまでやる義理はねえだろ」
「ならば、お前がこのガキの意見の前に口を出す義理も無かろう」
幼い瞳が睨むようにシノミヤを見据えると、図星を突かれたシノミヤは舌打ちを溢して自室へと入ってしまった。
先ほどまでの空気は一転し、ノアは状況を余り掴めておらずおろおろするばかりで、リュカも暫くはシノミヤの部屋の方を見つめていたが、再びバジルの言葉によってその視線は一斉にナツキへと向いた。