終わりで始まる進化論~第一部~
「本当かのう?」
「……どういう意味です?」
わざとらしく疑惑を持ちかけてくるバジルに羽柴の口調は落ち着きの中にも棘を持っているようだった。
だが、兄であるバジルが怯む様子もなく葉巻の煙を宙に吹かせながらどこか含んだ笑みを浮かべている。
「あの一件、事件発覚からの行動が本部に至っては対処がやけに早かったように思うがのう。実行隊のガキ共の仕事が用意周到過ぎる気がして仕方ないんじゃが……それにこのアンラッキー高校生の坊主の通っとった事も偶然とは言い難い気がするが、お前……何かわしに隠しとるんじゃないんか。のう?秀吉」
含んだ言い方をするバジルの言葉にいくつか違和感を覚えた。
確かになぜシノミヤがクラスメイトでなかったのだとしたら、あんなに早い段階で学校の事に気づけたのか?
そして、バジルの言葉からしてまるでナツキが居たから侵食が起こったとも解釈できる言葉である。
どちらにしても、ナツキにとって話が見えてこない。
しかし、羽柴はバジルの言葉の意味を理解しているのか、一瞬瞳を細めたものの普段どおりの微かな微笑を向ける。