終わりで始まる進化論~第一部~

「やっぱり、逆に落ち着かない。シノミヤに何か言われたって関係ないし」






ベッドから降りて教室に戻ろうとした時に、ふと空いている保健の先生の机に一枚の紙が置かれているのに気がついた。







カルテだろうか。学生の写真つきで学年やクラス、過去の病気の事も事細かに記されたものだ。







二年A組。同じクラスの生徒だろう、とても大人しそうで、少しぽっちゃりとした、どちらかと言えば、地味めな印象を与えている。






顔には見覚えがあった。






「この子知ってる。名前なんだっけ……え?」
四宮シノミヤ 光樹コウキ……四宮、シノミヤ」







『印象最悪だからな。ったく、同じクラスだろうがよ』
『ああ、変わった名前なんで嫌でも覚えたな。俺はシノミヤだ』
『俺はシノミヤだ』







さっきのシノミヤとの会話が壊れたテープレコーダーの様にリピートされる。






「うっ……!」





突然鈍器で殴られたような痛みが再びこめかみを襲った。さっきの比ではない、呼吸も一瞬忘れて立ったままの姿勢が耐えられず膝をつく。






違う。そうだ、漸く違和感の原因が何なのか分かった。シノミヤの事をナツキは知っていた。






大人しくて読書好きの生徒だ。余り友人もいないのか、一人で過ごしていることの方が多い生徒だったので、逆に何度かは気に止めていた。






しかし、これはシノミヤ……つまり、このカルテの人物、四宮光樹の事である。
そして、シノミヤと言う名前の生徒は同じクラスに二人も存在していない。







「だったら、さっきのあいつは……一体誰なんだよ?」
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