終わりで始まる進化論~第一部~
女剣士
こめかみを打ち付けるような痛みは保健室に居た頃より悪化していた。
これがさっきまで見ていた悪夢ならば早く覚めて欲しい。
覚束ない足取りで廊下を歩きながらも、ナツキは一枚の紙を握りしめていた。
四宮光樹のカルテだ。これを持ってもう一度あの男に問いたださなければいけない。
「どこに居るんだよ、シノミヤ」
シノミヤを探そうと思い立ったのは、カルテの件だけではない。
主にはこの学校の現状だ。
詳しく説明をするには、シノミヤと別れた後の保健室での出来事になるだろうか。
「あいつは、シノミヤじゃない」
恐らくシノミヤ、もといシノミヤと名乗る男は、このカルテを持っていたのだ。そして、ナツキにシノミヤとして接触した。
だけど、謎はいくつも残っている。
ナツキと接触するのならば、どうして同じクラスの人間を選んだのか?
確かに声はかけやすいが、逆に言えばナツキが四宮本人の事を知っている可能性の方が高い。
現にカルテを回収しなかった為に、ナツキに早くも気づかれてしまっている。
シノミヤがそこまで頭が悪い人間とは、どうしても思えない。
敢えて自分は四宮ではない、と教えて行ったのか?
だとしたら、そもそも偽名を名乗る必要なんてないはずだ。