終わりで始まる進化論~第一部~
ハンプティダンプティは塀に上がった。
ハンプティダンプティは落っこちた。
偉い貴族も力自慢の大男も
ハンプティを元に戻せなかった。
「またあの歌だ。こうなったら賭けだけど、何もしないよりはマシかな」
歌っている人間がどこかで見ているのかもしれない。もしくは、通りかかってくれるかもしれない。
もし歌い手が誘拐犯なら死のリスクも高まるが、何もしなければ永遠に脱出できない可能性だってある。
助けを求めるなら、今しかない!
「すみません。誰か、誰か居るんですか?……うわっ!」
ナツキの声に反応したのか床が突然隆起し、卵型の寸胴なモノが姿を現した。
足元だった為にナツキはバランスを崩して尻餅をつく。
「ンフッ!初めまして、ナツキ=ノースブルグ。お会いしたかったですう」
空気の読めない唐突なハイテンションのトーンが耳につく。
勢いよく半回転した卵、いや、卵の様な体型の男だ。
白いスーツに身を包み、病的なまでに肌も白いが、唇だけは強調する様に紅が引かれている。
おとぼけた口調の中に不気味さがあり、サーカス団の道化師と雰囲気がよく似ていた。