終わりで始まる進化論~第一部~

「と、とにかく、俺はシェルズ・コアの話や進化の話までは聞いてるよ」





「ノアの事は?」




「え?いや、それは何も。俺は彼女の事はシノミヤから聞いたさっきの情報が初めてだよ」





そう答え返した瞬間、ほんのわずかだがシノミヤが忌々しそうな表情を浮かべた気がした。





しかし、直ぐにどこか呆れたものへと変化する。





「進化って事は、実験の事も第二形態人種(セカンドタイプ)の事も聞いてるよな?」





「うん」





「俺らはシェルズ・コアの中の人間がどうなるか?という実験と、もう一つの実験を行ったんだ。それは、シェルズ・コアの中で人間はどこまで能力をあげる事が出来るのか?そして、人間らしさを保つことが出来るのか?この相反した二つの限界点を調べる実験だ」






「それって……!」





ナツキの声が思わず震えあがる。一つ目の実験は経過観察を見守れば良い。





シェルズ・コアの割れる時を待ち、その結果を記せば良いだけだ。つまり、実験で使うシェルズ・コアは一つで十分。羽柴の言っていた政府から譲り受けたとされる患者のみとなる。






しかし、見えないものの限界点を見極める実験は、対進化生物への戦闘力というリターンも大きいが、失敗というリスクも高い。








「まさか、他にもシェルズ・コアを使ったって事?」





「政府から譲り受けたのは一つだけだ。だが、俺らは対進化生物を作らなきゃならなかった。その為に、シェルズ・コアのあの粘液を被験者に投与した」





嫌な予感は的中した。苦々しい表情のシノミヤから発せられた言葉は紛れもない人体実験の事実だ。






「被験者の協力もあって、人工的なシェルズ・コアを作り出した。そして、殻を破壊しては、またシェルズ・コアを作り破壊する。繰り返しの実験は行われた……ある日、ついに人としての人格も持ち合わせて能力も向上させた、対進化生物の新しい人間が作り出されたんだ。けど、そいつは引き換えに一つの感覚を失った。それが、聴力だ」





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