終わりで始まる進化論~第一部~
シノミヤには、蜂の巣にされてしまうかもしれない。ノアの事は気にかけていた様にも見えたし、金髪ヤンキーはキレたら絶対手に負えない。
羽柴さんは……考えたくない。シノミヤよりも反撃が陰湿そうで執念深そうだ。どちらにしても、ナツキの命の危機である。
「とにかく、ここはまずい。外に出よう、ノアは部屋に戻って」
未だに眠そうなノアを強引に抱っこする形でベッドから降ろす。
「いあ!うううー」
朝が弱いのか、未だに布団への未練は拭えず抱き抱えられた状態でも、手足をばたつかせて抵抗を試みている。
女の子と言えど、ハーフタイプの寝惚けた抵抗は手加減が無いために本気で力が強い。
「嫌じゃない!ほら、ノア大人しく……いててて!大人しくしてって!おわっ!」
暴れるノアで視界を塞がれ扉の段差に気づかずに廊下に運ぼうとした為に、足が滑ってしまう。
とっさにノアの頭を守るために抱き止めたが、ノアの上にナツキが重なっている状況になっていた。
そして、最悪な偶然とは二度も三度も呼び寄せてしまうらしい。
ナツキの背後からは、どこか殺気のこもった声と、どこかからかいを含んだ声が絶妙なコラボレーションを見せていた。
「おい、何してんだ?テメエは!」
「女の子に朝から襲いかかるなんて、若さですかね。ナツキ君?」
「へ?え?……いや、違う!これは違いますよ!」
慌ててノアから離れたナツキは、弁解に努めようとしたが、片方は青筋を浮かべているし、片方は携帯のカメラで撮影し終えた画像をちらつかせている。
あ。駄目だ、これはどう繕っても半殺しと精神的苦痛は決定事項だろう。
その後、何の言い訳も通らず、金髪ヤンキーと陰険狐男の餌食になったのは言うまでもない。