終わりで始まる進化論~第一部~
「おい、もういい加減撃って良いか?」
「ちょ、ちょっと待って!タイム!むしろ助けて!」
空気中を急上昇からの急降下、もはやジェットコースターの比ではないほどの浮遊感で内臓が持ち上がるような不快感を味わいっぱなしだ。
こんな事になったのは、数分前に遡る。
ノアと羽柴さんが見守るなかで、試合は開始された。
勿論、ナツキの実力を試すものであり、シノミヤもメインで扱う拳銃ではなく、アサルトライフルを選択した。
威力はあるが重量があるし、身軽に持ち運べ動ける拳銃とは少し勝手も違うだろうハンデの意味だ。
分かっているが悔しい。素人扱い的な全員の空気を見返してやりたいとすら、ナツキは思っていた。
「威力をあげていけば、攻撃力もあがるだろうし、最大まで回してっと」
かかとのダイヤルを回しきれなくなるまで振り切った。
シュタールアイゼンは、今までの重力が嘘のように加速していく。そう、操縦者の意思とは無関係に。
空気抵抗を受けて足や体が痛いと感じるほどに加速していた。
これでどこかに激突すれば大惨事な上に、このまま天国へと誘われ兼ねない。
さすがに様子が変な事に気づいたシノミヤが呆れ顔で問いかけられたが、それどころではない。
「シノミヤ!止まらない!避けて!」
「うわっ!テメエ何やって!こっち来んなよ!」
「「うわああああ!」」
人間の速度で逃げ切れるわけもなく、対処にも遅れてしまったシノミヤとナツキは激突し、辺りには砂埃が舞っている。
「あらら。予想以上の暴れっぷりですね、勝敗どうしましょう?」
「あう。あううー」
心配そうに駆け寄ってきたノアに、冷静に見下ろす羽柴。
そして、ナツキ達は二人とも目を回していた。