終わりで始まる進化論~第一部~
「大体、あいつら来て何の意味があるんだよ。視察とか体(てい)の良いご託並べて、結局こっちのやり方にまたケチつけに来るんだろ?」
シノミヤの口振りからすると、今までも何度か訪問しては、あれこれと難癖をつけられているのだろうか?
ノアに視線を移すと、本日三つめとなるロールケーキを満足そうに頬張り、口の周りに生クリームをたっぷりとデコレーションしている。
緊張感も不満もまったく伝わってこないが、それはそれで苦笑がもれる。
「あくまで視察ですよ。それに、今回はナツキ君のお披露目も兼ねていますし、どちらにせよ失礼な態度は絶対に駄目ですからね」
「俺がどうこうしなくても、こいつのお披露目の時点で東部(あいつら)の集中砲火は決まったようなもんだろ」
「それどういう意味だよ?」
「あ?そのままの意味だろ。一回で理解しろよド素人」
見えない火花が隣同士で飛び散らせながら互いが互いを睨みあって、牽制し合う。
その様子にさすがにおろおろとしたノアが本日四つめとなるロールケーキを諦めかけた時だった。
羽柴の部屋のノックが二度ほど響いたかと思えば、返答が返るのを待つこともなく勝手に足音は中へと入り込んできた。