終わりで始まる進化論~第一部~
あれは風邪という訳でもなく、勿論恋人への反応でもなく、怒りと屈辱で赤くなっているのだとナツキもさすがにきづく。
「ちょっと羽柴!これはどういうつもり?新人の教育がなってないんじゃないの?!」
羽柴の机を力任せに叩いて猛抗議をする少女は彼を鬼の形相で睨み付けている。小さく嘆息した羽柴だったが、ティーカップを静かに置いて頭を下げたのだ。
「申し訳ありません。私の監督不行き届きです。ナツキ君……いえ、部下には言って聞かせます」
「ふんっ!当然よ、無礼な新人ね。このあたしを子供扱いなんて、東部(こっち)じゃ処刑ものだわ。あたしの寛大さに感謝する事ね!」
頬を押さえたナツキは未だに状況が把握できていないのか、目をしばたかせている。
転がったままなのは更に目の前の少女の怒りを買いそうで立ち上がった彼に、羽柴は張り付けた笑顔を浮かべて紹介をしてきた。
「ええと、さきほどお話していた東部支所所長の春日井(かすがい)アリス君です。彼女ら東部支所の方は東部第一地区で第二形態人種(セカンドタイプ)を一気に三体も解体した実績の持ち主でもあり、戦闘のエキスパートです。
本日は本部への視察で夕刻には会食の予定となっております……ええと、それじゃあシノミヤ君かナツキ君、アリス君の施設案内をお願いします」
淡々とした説明なのだが、ナツキは開いた口が塞がらない状態である。
子供だと思っていた女子は、女子ではなく女性であり、何よりも自分自身には到底追い付けそうもないエリート上司だったのだ。