終わりで始まる進化論~第一部~
彼女の悲鳴が響き渡り、自らの足を庇おうとするが両手を相棒を庇って両手が塞がり思うように動けない。
その間にも食い込み続ける管による圧迫で、彼女の足首は紫に変色していく。
「春日井さん!」
地面を蹴るだけで弾丸の如く空間を切り裂き突き抜ける速度を持つシュタールアイゼンで助走スピードを利用して蹴り上げる。
管の中の毛細血管の様な配線がぷちぷちと音をたてて避けた。
地面を這いながら裂けた細い管は、とある場所へと帰っていく。
「あれは……触覚?」
セカンドタイプの触覚へと戻っていった管は、ナツキが裂いた断面から毛細血管が複雑に絡み合い、再び再生していく。
これでは拉致があかない。長期戦になればなるほどにナツキに不利となる事は明白である。
こうなったら……。
「春日井さん、すみません!」
「きゃあっ……な、何してんのよ!降ろしなさい!」
謝罪と同時にナツキはアリスの小さな体を抱き抱える。小さな悲鳴と共に顔を赤くした彼女から叱責が飛んでくる。
出会ってから怒られてしかいないナツキだが、今は彼女の命令を聞いている場合じゃない。
チョーカーに手を当てて羽柴と通信を取る。
「羽柴さん、すみません。まずは安全な場所まで春日井さんを運びます」
「仕方ありませんね。アリス君を運んだら、直ぐに戻ってください。あまりセカンドタイプを自由にさせたくはありません」
ノアやシノミヤがまだもう一体と戦っている状態で目を離すのは賭けではあるが、どちらにしても怪我人を庇いながら戦うことは難しい。
出力は最大のままで、ナツキは地面を蹴って空中へと飛躍する。
「苦しいかもしれないけど、しっかり掴まってて下さい」
その言葉に腕の中の強気な彼女は何かを呟いたものの、ナツキの方へと顔を上げることが無かったために、聞き取れなかった。
変わりにナツキの首に細い腕が回される。
どうやら漸く撤退に納得したのだろう。ナツキは彼女を安全な場所へ連れていく為に一次撤退したのだった。