終わりで始まる進化論~第一部~
危機
「大丈夫ですか?」
ナツキが降り立ったのは、数日過ごしていた羽柴の経営施設の前。
セカンドタイプの襲来している場所からは距離があるし、アリスの方へは羽柴も駆けつけやすいだろう。
ここならば安心だと踏んで、ナツキは声をかける。
「平気よ……大丈夫だから、あんたは戻って。あたしに構ってる暇なんて無いくせに、余計なのよ」
「何言ってんですか!怪我してるのに、あんな所に居たら……」
「それが余計なの!そもそも羽柴の指示に従って動く予定だったでしょ。あんた、これから先も感情で先走るつもりなの?」
「さっきの春日井さんを助けるなって命令が出るなら、俺はそんなの聞けません。その行動が間違ってるなんて事も思いません」
「っ!……一番に自滅するタイプね」
「そうならないように、精一杯やりますよ」
驚いた表情を浮かべたアリスは憎まれ口をたたきながらも、その口調には棘は見られない。少しは役に立ったと認めて貰えているのだろうか?
だとしたら、彼女の事も守れるようにセカンドタイプを防ぎきらなければならない。ナツキは俄然やる気になってきた。
「羽柴さん。俺、これから戻ります」
「分かりました。ただ、アリス君が心配なのは分かりますが、単独行動を開き直るとは思いませんでした」
「うっ……」
羽柴の指摘には耳が痛い。思わず謝罪を口に出しそうになったが意外にもそれを制止したのは羽柴だった。
「しかし、君のおかげでアリス君が言う事を聞いてくれたのも事実です。感謝します」
「そんな……俺は、何も」
「いえ、私だけの言葉ではあそこまで素直に応じてくれませんでしたよ。ただ、あなたも大事な戦力です。今回は良しとしますが、単独行動はなるべく控えてください」
「はい、すみません」